オグラ眼鏡店

メガネは医療機器です。

高齢期の低視覚対策

年齢や生活環境に合わせ
適切な補助器具を選択

40代以降になると、病気やけがなどが原因で低下した視機能が思うように回復しなくなることが多い。治療をしても低視力や視野の障害が残ってしまう、あるいは失明という事態に直面した人に対して、少しでも生活を広げるアドバイスや具体的な対処手段を提供すること――すなわち「ロービジョン(低視覚)ケア」は、これからの日本が注目すべき重要な医療分野の一つだ。

現代は「視覚に頼る情報社会」とも言えるほど、見ることが生活の質に直接つながっている。それだけに、ロービジョンになった人が今持っている視機能を最大限に生かして、生活範囲を拡大したり仕事を維持できる可能性を求めていくことは非常に重要だ。

例えば、黄斑(網膜の中心部)が変性して視野の一部が欠けてきた場合、視機能の現状を十分理解して、どんなときにどんな注意をすればいいか、補助器具を使って何をどこまでできるのかなどが分かれば、困難にも前向きに対処していける。視線の正面が見えなくなってしまった場合でも、中央に近い視野に見える部分が残っていれば、プリズム眼鏡と拡大読書器などを使って「見える部分で見る」訓練をすることで、ある程度の大きさの字を読めるようになる可能性がでてくる。

ロービジョンの不便さは一人ひとり違う。日常生活のどんな場面で何を見ることに不便を感じているかは、年齢や生活環境などによって様々だ。残存視機能を客観的に評価して、生活上の不便さを分析しながら適切な補助器具を選択して訓練することで行動範囲が広がることも少なくない。

また最近では、眼科医が患者の治療中に今後の視覚困難を予測した時点、あるいは患者が視覚困難を訴えた時点から「ロービジョンケア」を始める病院が増えてきた。難病に罹患し完全に失明する前にパソコンのブラインドタッチなどを練習しておけば、より高度な仕事を維持できる可能性が高まる。診断と治療、ケア方針決定は眼科医が行い、支援とアドバイスは視能訓練士や歩行訓練士などの補助士が行う。両者が緊密に連携しながら、より良いケアを提供する試みだ。

国内の視覚障害者数は2007年時点で164万人。その約60%は65歳以上だ。原因疾患では緑内障が約26%を占め第1位、次いで糖尿病網膜症が約20%、3位は加齢黄斑変性で約11%、女性は病的近視が多い。また病気でなくても、加齢に伴い、視機能は徐々に低下していく。

ロービジョンでも生き生きと活動できる社会を築くため、地方での深刻な眼科医不足を解消し、地域ごとに優良なケア拠点を育てることが必要だ。

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杏林大学医学部 アイセンター教授
平形 明人 氏

1982年慶応義塾大学医学部卒業後、同大大学病院、国立栃木病院眼科医長などを経て、米国デューク大学アイセンターに留学。97年杏林大学医学部助教授、2005年教授、08年主任教授となる。また、日本眼科学会評議員、日本網膜硝子体学会理事などを務める